【WRENCH】圧倒的な存在感でジャンルを超越した音楽ファンを魅了するロックバンド

ライブハウスを中心に、クラブやレイヴ、大型音楽フェスなど、さまざまな場所で活躍するロックバンド、WRENCH(レンチ)。1992年の結成以来、多種多様な音楽を吸収して独自の進化を遂げた彼らのサウンドは、ジャンルを超えたコアなリスナーから高い評価を得ています。

昨年(2022年)結成30周年を迎えた今なお、新たなサウンドを求めて前進するWRENCHが、2023年5月26日に最新シングル『Breaking Man / MOONSHOT』をアナログレコードでリリースしました。

当記事では、WRENCHのバイオグラフィと、新作発売を記念して公開収録されたDOMMUNEのスペシャルプログラムの模様をお届けします。

BIOGRAPHY ① 和田成文 / 坂元東 / 松田知大 / 名越藤丸


photo by Isao Amano

1992年、ヴォーカリストのSHIGEこと和田成文(わだしげふみ) 、ギタリストの坂元東(さかもとあずま)、ベーシストの松田知大(まつだともひろ)、ドラマーの名越藤丸(なごやふじまる)の4人が、WRENCHの前身となるFIGHT FOR YOUR RIGHTを結成。

当時の日本ではまだ珍しかったミクスチャーロック・バンドとしてスタートした彼らは、次第にUSオルタナティブロック・シーンで注目を集めていたHELMETのようなヘヴィ・グルーヴを追及するようになります。

1994年4月に、FIGHT FOR YOUR RIGHTからWRENCHに改名。同年9月にインディーズレーベルのZK Recordsからセルフタイトルを冠した1stミニアルバム『WRENCH』をリリース。下北沢シェルターで行われた発売記念ライブには、対バンとしてHi-STANDARD、Nails of Hawaiian、のちにファッションブランド「DEVILOCK」を創業する遠藤憲昭がヴォーカリストを務めていたGMFが出演しています。

1995年に4曲入りの12インチシングル(アナログレコード)を発表。B面には、20分を超えるPINK FLOYD「Let There Be More Light」の長尺カバーが収録されました。

1996年に待望の1stフルアルバム『BLACK HOLIDAY』をリリース。先行カットされた『空』のシングルには、“東洋のテクノ・ゴッド”と称されるケン・イシイと、人気ヒップホップ・グループSHAKKAZOMBIEのTSUTCHIEによるリミックスが収録されました。
なお、翌年発表されたケン・イシイの『METAL BLUE AMERICA』に、ヴォーカリストとしてSHIGEが参加しています。

当時、テクノやヒップホップのDJ/プロデューサーをリミキサーに起用するような発想を持つロックバンドは珍しく、ロックとダンスミュージックの橋渡し的な存在として、アンダーグラウンド・シーンで徐々に注目を集めていきます。

1997年には、ミニアルバム『ヒポテーゼ』、NUKEY PIKESとのスプリットシングル、2ndアルバム『WANDERING IN THE EMPTINESS』を立て続けにリリース。

1998年には、Hi-STANDARDやCOCOBAT、BRAHMAN、SUPER STUPIDといった人気バンドが多数参加した『AIR JAM ’98』に出演。圧倒的なパフォーマンスで、のちに“AIR JAM世代”と呼ばれるキッズや音楽関係者たちに、その存在を強烈にアピールしました。

海外アーティストと共演することも多々あり、UNSANEやSPITBOY、VISION OF DISORDER、ORANGE 9mm、ROLLINS BAND、SNAPCASE、SOUL BRAINS名義で活動していた時期のBAD BRAINSなどの来日公演で、サポートアクトを務めています。
WRENCHの強烈なパフォーマンスは、来日アーティストを目当てにチケットを買った洋楽志向の強いリスナーをも魅了しました。

1999年に、ビクターエンタテインメントから3rdアルバム『BLUE BLOOD BLUE』をリリースしてメジャーデビュー。

2枚のシングルと4thアルバム『bliss』を発表した2000年には『AIR JAM 2000』や『Sweet Love Shower 2000』といったフェスにも出演しています。

このころから、SHIGEがライブでシンセサイザーを使用するようになり、それまで以上にダンスミュージックの要素を取り入れた作品を制作。

ミニアルバム『Clinic of “SATANIC”』(2001年)、5thアルバム『CIRCULATION』(2002年)に続き、よりデジタルロック色を強めた6thアルバム『OVERFLOW』をリリースした2003年、ドラマーの名越が11月の東京と大阪のライブを最後に脱退することが発表されました。

WRENCH / 空虚放浪
@ ON AIR WEST 2003-11-04
※名越在籍時代の東京ラストライブ

BIOGRAPHY ②
 SHIGE / SAKAMOTO / MATSUDA / MUROCHIN


photo by Wataru Umeda

ABNORMALSやCOCOBATの活動で知られるMUROCHINを新ドラマーに迎えたWRENCHは、2004年11月に7thアルバム『TEMPLE OF ROCK』をリリース。2007年には、avex傘下のcutting edgeに移籍。傑作の呼び声高い8thアルバム『nitro』を発表します。

2008年には、浅野忠信、セイジ(ギターウルフ)、HIFANA、石野卓球(電気グルーヴ)、GOTH-TRADといったアーティストが参加したコラボレーション・アルバム『drub』を制作。AYASHIGE名義でDJ活動を行うSHIGEによる「fill more (feel more / 123BPM ver.) -AYASHIGE remix-」も収録されました。

『drub』をリリースした直後には『FUJI ROCK FESTIVAL ’08』のWHITE STAGEに出演。その後も『渚音楽祭』や『KAIKOO POPWAVE FESTIVAL』など、多くのフェスに参加しています。

WRENCH / FEEL MORE
@ KAIKOO POPWAVE FESTIVAL ’10

2011年にライブ&リミックス・アルバム『EDGE OF CHAOS reCONSTRUCTION LIVE & REMIXXX』を発表。2012年には、初ライブを行った7月7日に結成20周年記念イベントをリキッドルームで開催。オールタイムベスト的なセットリストを披露しています。

精力的にライブ活動を続けてきたWRENCHが、2019年3月に9thアルバム『weak』をリリース。オリジナルアルバムとしては『nitro』以来となる12年ぶりの作品です。

WRENCH / KIRAWAREMONO

WRENCH / 助詩

『weak』の発売とほぼ同時に、諸事情によりMUROCHINが活動を休止することに。

WRENCHは、ABNORMALSのMASATOをサポートドラマーに迎えてライブ活動を継続。このメンバーで『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』にも出演しています。

新型コロナウイルスが猛威を振るい、多くのイベントが延期や中止に追い込まれるようになった2020年。当初は5月に予定されるも延期となったMUROCHINの復帰ライブを、7月に無観客配信ライブとして開催。ライブの終盤にはMASATOとのツインドラムも披露されました。

2020年8月には、全編ツインドラムでの配信ライブを敢行します。

WRENCH LIVE STREAM! DOUBLE DRUMS SESSION
@ SHINDAITA FEVER 2020-08-31

BIOGRAPHY ③
 SHIGE / SAKAMOTO / MATSUDA / MUROCHIN / MASATO


photo by Kana Tarumi

2020年10月、MASATOが正規メンバーとしてWRENCHに加入。5人編成で活動することが発表されました。

2020年11月7日には、コロナ以降初の有観客ライブを実施。

WRENCH / Nothing
@ SHINJUKU WILDSIDE TOKYO 2020-11-07

結成30周年を迎えた2022年には、新代田フィーバーにて三度にわたるアニバーサリー・イベントを開催(4月16日、8月6日、12月3日)。ファイナルの『”EDGE of CHAOS” Current & Beginning』は、現メンバーと、初代ドラマーの名越藤丸を迎えたオリジナルメンバーによる二部構成で行われました。

2023年5月26日に『Breaking Man / MOONSHOT』』をアナログレコードでリリース。さまざまなジャンルの音楽ファンから称賛を得た『weak』以来となる4年ぶりの新作は、ツインドラムの5人編成となった現メンバーによる初音源です。

WRENCH / Breaking Man

WRENCH / MOONSHOT

最新アー写も公開されました。


photo by Kana Tarumi

WRENCH x MURDER CHANNEL Presents 『Breaking Man / MOONSHOT』 RELEASE SPECIAL @DOMMUNE!!!


(C) DOMMUNE

2023年5月30日、WRENCHが出演するDOMMUNE(ドミューン) の公開収録へ。

映像作家/グラフィックデザイナー/VJとして知られる宇川直宏が主宰するDOMMUNEは、2010年3月1日に開局した日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル。ネットでの視聴のみならず、スタジオでも観覧できるDOMMUNEは、国内外の音楽ファンから絶大な支持を集めています。

新作12インチシングルの発売を記念してライブ配信されたWRENCHのスペシャルプログラムは、トークとライブの二部構成。

第一部のトーク・パートには、WRENCHのメンバーと初代ドラマーの名越藤丸、元マネージャーの梅田航と石渡のりお、MCやDJとして活躍するブライアン・バートンルイス、レーベルMURDER CHANNELを主宰する梅ヶ谷雄太、そして宇川直宏が出演。

ケン・イシイ、DJ TASAKA、DJ TSUYOSHI、上田剛士(AA= / ex. THE MAD CAPSULE MARKETS)、プンクボイことロマン優光(ロマンポルシェ。)、石野卓球(電気グルーヴ)、セイジ(ギターウルフ)、浅野忠信といった親交の深いアーティストからのビデオコメントも届いていました。

前身となるFIGHT FOR YOUR RIGHTが結成された経緯や、WRENCHへの改名、メンバーチェンジ、『AIR JAM』や『FUJI ROCK FESTIVAL』といった大型フェス出演時のエピソード、過去作品や新作12インチシングルの制作秘話など。31年の歴史をふり返る、マニアにはたまらない内容でした。

このたび初めて公開された秘蔵のライブ映像も貴重なものばかり。FIGHT FOR YOUR RIGHT時代の映像(1993年)や1stミニアルバム発売記念ライブ(1994年)、2008年のフジロックなどの映像を観ながら、当時のエピソードも語ってくれました。他では聞けないような裏話がたくさん披露されたのは、生配信ならでは。

新作12インチのアートワークを手がけたベーシストの松田知大によるジャケットの解説も、非常に興味深いものでした。

トーク・パートの終盤に上映された「MOONSHOT」のミュージックビデオも、松田がアートワークを担当しています(監督は三ツ井春伸)。AIを使用せず、素材を集めて切り貼りする手法によって制作されたコラージュアートは、日本におけるVJの先駆者である宇川直宏も絶賛していました。

第二部にはWRENCH、yumeo、Miyuki Omuraが出演。MURDER CHANNELから新作をリリースした2組がスペシャルプログラムに花を添えました。

Miyuki OmuraのDJに続いて、WRENCHが登場。1曲目は「Breaking Man」。ニューシングルの2曲は過去に何度もライブで演奏されていますが、音源がリリースされたことで、ファンの盛り上がりもこれまで以上。

現時点での最新フルアルバム『weak』から「NOCHINOI」と「ヘルノポリス」。そして、ラストはもちろん「MOONSHOT」。

新型コロナウイルス感染症の法的な位置付けが「5類」に移行したことで、コロナ禍以前のように歓声を上げ、身体を揺らしながらWRENCHの強烈なライブパフォーマンスを体感することができました。30分の短いセットながら、最新シングルの2曲を爆音で聴けたので大満足です。

yumeoのライブセットを聴きながら、演奏を終えたWRENCHのメンバーや関係者と談笑。誰もが皆、充実した表情を浮かべていました。

新作12インチシングル『Breaking Man / MOONSHOT』

WRENCH
『Breaking Man / MOONSHOT』
12inch vinyl (MMDS23001EP)

SHIGE – vocal, synth
SAKAMOTO – guitar
MATSUDA – bass
MUROCHIN – drums
MASATO – drums

最新シングル『Breaking Man / MOONSHOT』』は、片面に1曲ずつ収録したアナログレコード。ダウンロードコードが付いているので、レコードプレーヤーを持っていなくても音源を聴くことができます。

30センチ四方のレコードジャケットを自室に飾るのもオススメ!

『Breaking Man / MOONSHOT』 Special Site
https://breakmoon.wrench.jp/

Interview

WRENCH Official Website
http://wrench.jp/

『Breaking Man / MOONSHOT』発売記念ライブを開催

2023年6月17日、下北沢CLUB Queで『Breaking Man / MOONSHOT』発売記念ライブが開催されます。共演はMELT-BANANAと黒電話666 (PROTOTYPE018)。DJとしてL?K?Oも参加します。

強烈な個性を放つアーティストが集結した注目のイベントをお見逃しなく。

2023年6月17日(土)@下北沢CLUB Que

WRENCH 30yrs Extra!!! “EDGE of CHAOS”
12″ Vinyl EP Release Party!!!

[Live] WRENCH
MELT-BANANA
黒電話666 (PROTOTYPE018)

[DJ] L?K?O

open 18:15 / start 19:00
ADV 3,000yen+1DRINK / DOOR 3,500yen+1DRINK

LivePocket
https://t.livepocket.jp/e/que20230617

イープラス
https://bit.ly/3ZLZOq5

ローチケ
https://l-tike.com/

CLUB Que
03-3412-9979

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この記事を書いた人
五辺宏明

レコード&昭和プロレス愛好家。
でもほんとはライブ至上主義。
音楽サイトやnoteに駄文を執筆しています。

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